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2018年 白鳳丸による東部インド洋観測航海(KH-18-6)

 東部インド洋は、その領域の多くが熱帯暖水プール域にあり、気候の擾乱発生域として、また、そこでの海洋変動が気候の変動や変化を司るペースメーカーとして重要な役割を果たす海域です。さらに、西部インド洋を通過して大西洋へとつながる循環経路の要でもあり、熱や物質が太平洋から直接流入することで、特徴的な生物相、生物地球化学特性や循環系を形成しています。このように気象学、海洋物理学、気候変動学、地球化学、生態学などにおいて重要な海域であるにも関わらず、その詳細を把握するための海洋内部や生物地球化学に関する基礎的なデータが絶対的に不足しています。この東部インド洋に関する知見の不足は、この海域のみならず全海洋の現状把握や変動機構の理解および将来予測研究で重大な障害となっています。そのため、大気・海洋に関する知見が極めて少ない東部インド洋において観測データを取得し、海洋物理・生物地球化学・生態学的特性を統合的に把握することを大目的として、関連分野の研究者が協力して研究航海を行いました。

研究題目 東部インド洋における海洋物理・生物地球化学・生態系の総合的観測研究
期間 2018年10月23日(火) - 12月29日(土) 68日間
Leg 1 出 港: 10月23日   東京 港
入 港: 11月4日   プーケット 港  (回航のみ)
Leg 2 出 港: 11月6日   プーケット 港
入 港: 12月3日   ジャカルタ 港
Leg 3 出 港: 12月6日   ジャカルタ 港
入 港: 12月29日   フリーマントル 港
海域 ベンガル湾、東部インド洋熱帯域、および南東部熱帯インド洋
研究内容 1. 東部インド洋における表層循環系に関する研究
2. 東部インド洋における生元素動態に関する研究
3. 東部インド洋における生態系構造と動態および生物多様性に関する研究
4. 東部インド洋における微量元素・同位体の生物地球化学循環の解明
5. 東部インド洋におけるエアロゾルと窒素循環および海洋生態系に関する研究
6. 東部インド洋における炭酸系成分等の分布に関する研究
7. 東部インド洋における海面でのCO2およびCH4フラックスに関する研究

Leg-2(左図)およびLeg-3(右図)の航路図


 私たちの研究室では、上記のうち Leg-3(ジャカルタ→フリーマントル間)に乗船し、研究内容「1. 東部インド洋における表層循環系に関する研究」を担当しています。

 表層循環系の観測として

  1. CTD観測
  2. LADCP観測
  3. 表層乱流観測(Turbo-MAP観測)
  4. U-CTD観測
  5. 船底ADCPによる表層流速構造の連続観測
  6. 海上気象要素の連続観測

を行い、インドネシア通過流域の循環系、ニンガルー・ニーニョ域の海況場と大気海洋相互作用の研究を行うためのデータを取得しました。

 インドネシア通過流は、インド洋の特徴的な循環系を作り出す原動力であり、インド洋域の変動に対して重要な境界条件ともなる海流系で、その構造や変動機構や他の海流系や気候変動現象などに与える影響には未解明のことが多く残されています。特に、インドネシア通過流周辺では直径数百キロメートル程度の中規模渦と呼ばれる海洋の渦が多数発生することが知られています。これらの中規模渦の構造とインドネシア通過流との関連性なども重要な研究テーマとなります。

 ニンガルー・ニーニョ(ニンガルー・ニーニャ)は、オーストラリア西岸・北西岸沖のLeeuwin海流域で海面水温が通常よりも高く(低く)なる現象で、数年に一度程度の頻度で発生しています。ニンガルー・ニーニョ/ニーニャが発生すると、大気海洋相互作用を通じてオーストラリア西部を中心とした周辺域の気候に影響を及ぼすとともに、海流や水温の変動を通じて沿岸域の生態系に影響を与えます。極端な場合には大規模なサンゴの白化現象を引き起こすことも知られています。
 2018年の12月には、このニンガルー・ニーニョ/ニーニャ域で大規模な海面水温の低下が見られ、ニンガルー・ニーニャが発生していたと考えられます。最近10年程度はニンガルー・ニーニョが複数回発生し、ニンガルー・ニーニャは発生していませんでしたが、久しぶりの大規模なニンガルー・ニーニャ現象発生中に現場での海洋内部の観測データを得る貴重な機会となりました。

 現在取得したデータの解析を進めており、今後成果を発表していく予定です。


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