投棄式流速計を用いた乱流強度の緯度依存性の検証

数値シミュレーションに基づいて予測された、「深海での乱流混合強度が緯度30度をはさんで急変する」という顕著な緯度依存性を、投棄式の流速計を世界中の様々な海域で投入するという大規模な観測を実施することによって、世界で初めて実証しました。 図1は北太平洋の各海域で得られた鉛直拡散係数を緯度の関数としてプロットしたものです。 これを見ると、PSI機構から予想されるように、緯度約30度より低緯度側では、それより高緯度側に比べて、鉛直拡散係数が著しく大きくなっていることがわかります。 特に、緯度50度付近のアリューシャン海嶺と、緯度20度から30度付近のハワイ海嶺、伊豆・小笠原海嶺は、いずれも内部潮汐波の強い励起源となっている海域であるにもかかわらず、それらの近傍での鉛直拡散係数値は大きなコントラストを示しています(Hibiya amd Nagasawa, 2004)。

図1: 投棄式流速計を用いて見積もられた鉛直乱流拡散係数の緯度依存性。カラーは内部潮汐波のエネルギーを表す。緯度30度付近より低緯度側でだけ鉛直拡散係数が大きくなるという顕著な緯度依存性が認められる。