ダイポールモード現象の長期変調に関する研究


 


 ダイポールモード現象は、インド洋熱帯域に発生する気候変動現象です。この現象は、まず、春の終わり頃に、何らかの原因によってインドネシア・スマトラ島沖で平年よりも南東貿易風が強化されることによって始まります。すると、赤道上では東風が引き起こされ、西向きの海流が生じます。この海流によって東インド洋の暖水が西インド洋の方へ運ばれるため、西インド洋の海面水温は上昇します。逆に東インド洋では、強い南東貿易風に伴うスマトラ沿岸域の沿岸湧昇(南半球では、風の進行方向の左側に表層の海水が吹き寄せられる。これを補うように沿岸域では、下から海水が上がってくる)や風が強まったことにより活発になった蒸発に伴う潜熱放出により、海面水温は低くなります。このような東西の温度コントラストは、東西の海面気圧傾度を生み出すため、さらに赤道上の東風を強化します。上記のような正のフィードバックにより、ダイポールモード現象は秋にピークを迎えます。その後、冬季モンスーンの訪れによって、南東貿易風が弱まり、正のフィードバックが働かなくなるため、急激に減衰していきます。また、赤道上の東風が赤道から少し離れた海域に暖水偏差を作り、この暖水偏差がロスビー波として西方伝播して西岸で反射した後、ケルビン波として東方伝播し、インドネシア沿岸域に達することも減衰の一因になっています。このような現象は数年に1回の割合で発生し、インド洋沿岸諸国だけでなく、ヨーロッパや日本の気候にも大きな影響を及ぼすことが知られています。


「研究内容へ戻る」