「自由意志といったものが語られる世界は、地球だけだったよ」




18 Dec 2022

ことしはヴォネガット生誕 100 年だそうで、スローターハウス5を再読していたら、自由意志に関する一つの答えがあった。最初読んだ時には気づかなかった。

私はトラルファマドール星人だ。きみたちがロッキー山脈をながめるのと同じように、すべての時間を見ることができる。すべての時間とは、すべての時間だ。それは決して変わることはない。予告や説明によって、いささかも動かされるものではない。それはただあるのだ。瞬間瞬間をとりだせば、きみたちにもわれわれが、先にいったように琥珀のなかの虫でしかないことがわかるだろう。

これでリベットの実験が説明できたりして。

つまり人間の無意識は三次元から少しだけはみ出していて四次元を見ている。意識はそれを知らないから自由意志なんてもので後付け説明している、と。

この世の中は四次元で創造された。ただ人間は時間軸に関しては一点しか認識できない。その一点は正の方向に移動する。一方トラルファマドール星人は四次元すべて見える。

ここで問題となるのはトラルファマドール星人が四次元すべての方向に移動できるかどうか。もし出来るとすれば移動しない(あるいは一点の近傍しか移動しない)という選択をするとその結果、有限の空間内にトラルファマドール星人が複数存在して、しかもトラルファマドール星人は生殖をするからどんどん増加して資源を尽くしてしまうだろう。あるいは空間がトラルファマドール星人に埋め尽くされるだろう。一つの説明は四次元のある方向は見ることができるが、その方向軸上で現在存在する「位置」はトラルファマドール星人の意志では制御できず正の方向に移動しているという仮定をすること。その方向とは結局「時間」となる。その時間方向に存在が有限(つまり彼らもいつか「死ぬ」)ということ。そういうものだ。トラルファマドール星人は未来と過去をすべて知っている。なるほど。そうしたら自由意志なんかいらない。

その結果

われわれがこうした本を愛するのは、多くのすばらしい瞬間の深みをそこで一度にながめることができるからだ。

これってつまり結果より過程ってことで日本人はトラルファマドール星人と仲良くなれるかもしれない。