\# ずいぶん前の話 の続き。出典はそちらを。
昔から「気候学」にはなんだか怖い印象があって気候変動とか気候力学とか耳にすると逃げていたのだが、先日読んだストンメルの本でなんとなくこういうものか、と腑に落ちたという話。これ夫婦で書いていることになっているが、終わりの 11 章から 13 章は旦那が書いたものと考えてよさげ。
当時(って 19 世紀)考えられていた「気温の決まり方」に関する諸説を紹介し、温度計と温度の代替指標(プロクシ)の紹介をして、本の主題である「火山の噴火と気温低下」の話につなげるのだが、時間スケールの問題・データの代表性の問題・大気海洋の内部変動の問題など現在の地球科学データを扱う際の最も根本的な問題をちゃんと説明している。で、要所に先日の日記で紹介したような警句や
The main task of climatology has always been documentation rather than explanation.
みたいな決めセリフが散らしてある。これが 11 章で、12 章は実際にデータの時系列を見せて You be the judge 。当然ここから統計学への動機が生まれるわけ。で最終 13 章は実際に 1816 年に起きたヨーロッパ・北米の気温低下とタンボラ火山との関係を丁寧に考察する。ロスビー波によるテレコネクション重要。
というわけでこれ学部生レベルの気候学入門に良いんではないか。何回かに分けて丁寧に英語読んで最近の研究ではと補足が出来れば面白そう。日本語訳もあってアマゾン日本サイトにはなぜか「こんな薄い本で気候学を概説するのは無理」という可哀そうな書評がついているが、どうしてどうしてこんな薄い本のしかもおしまい3章で気候学も含む地球科学のデータの扱い方の要所が押さえられている。