対流圏界面付近では、鉛直スケールが 1-3km 程度の長周期波動が頻繁に観測さ
れており (例えば Sato & Woodman, 1982)、対流圏と成層圏間の物質混合に影響
を与えると考えられている (Danielsen 他, 1991)。これらの波源についての研
究は多くなされているが (例えば Hines, 1989; Cornish & Larsen, 1989; Sato
& Dunkerton, 2002)、圏界面付近に波が捕捉されるメカニズムは不明である。
ところで近年、地球角速度ベクトルの水平成分に由来するコリオリ力 (f_H力)
が、海洋中では無視できない場合がある事が指摘されている (Kasahara & Gary,
2006)。特に上下共に rigid lid の場合、fH力により慣性振動数よりも低周波数
を持つ sub-inertial モードが出現する。これは従来の慣性重力波モードと異な
り、弱い成層領域で卓越する。
大気においても対流圏界面直下に弱い成層領域が存在する。本研究ではこれに着
目して、f_H力の重力波の特性に対する影響を線形 Boussinesq 系を用いて調べ
た。その結果、弱成層域においてf_H力に起因する捕捉解が存在する事が明かと
なった。名瀬におけるラジオゾンデ観測データを解析した所、この捕捉波と特徴
が似た擾乱が存在する事も確認できた。