ダイポールモード現象の長期変調に関する研究


 


 長期変調のメカニズムを調べたところ、主に次の2つの要因によることが明らかになりました。

(1)インドネシア通過流

 インドネシア通過流は、西太平洋熱帯域から東インド洋熱帯域へと暖かい海水を輸送します。このインドネシア通過流が弱まると、東インド洋の方で、冷水の湧昇が起きやすくなり、正のダイポールモード現象が発生しやすくなります。つまり、インドネシア通過流が弱い年代に、正のダイポールモード現象の発生頻度が上昇することが明らかになりました。

 インドネシア通過流の強弱は、西太平洋と東インド洋の水位差(西太平洋の方が高い)によって決まっていると考えられています。例えば、エルニーニョ現象が発生すると、太平洋赤道域の東風貿易風が弱まるため、西太平洋に吹き寄せられる海水が減り、西太平洋の水位は下がります。すると、西太平洋と東インド洋の水位差が小さくなるので、インドネシア通過流が弱まります。


(2)南向きの熱輸送
 
 南インド洋の亜熱帯高気圧(マスカリン高気圧)の北縁では、東風が吹いています。この東風は、エクマン輸送により、北から南へと表層付近の暖かい水を輸送します。何らかの原因で、この高気圧が強化されると、南向きに輸送される暖水の量が増えるので、冷水の湧昇が起きやすくなり、正のダイポールモード現象が発生しやすくなります。

 このマスカリン高気圧は、様々な時間スケールで変動することが知られていますが、まだその原因はまだ特定されておらず、さらなる研究が必要です。




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