2011 年度 第 3 回 気象学セミナー

場所 理学部 1 号館 8 階 851 号室
日時 6 月 9 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 土屋 主税
講演題目 対流により励起された重力波と中間圏東風変動
概要
対流により励起された重力波は下部成層圏赤道域の東西風に現れる準二年周期振動 (QBO)の駆動など中層大気における大規模な循環に大きな役割を担っている.最近,Sato et al. (2009) により高解像度 GCMを用いた研究が行われ,夏の中間圏上部弱風層を維持する重力波の励起域は,夏季インドモンスーン・オーストラリアモンスーン域であることが示された.これは,中間圏東風の変動の一因がモンスーン域の降水活動である可能性を示唆している.また,Wright and Gille (2011) は観測データを解析して,活発な対流活動を反映したモンスーン域のOLR,降水量の季節変化と重力波による水平運動量の鉛直フラックスの季節変化の相関が高いことを示した. そこで,本研究では,衛星データ (COSMIC)・再解析データ (MERRA)・降水量データ (GPCP)を用いて,降水と重力波,重力波と中間圏東風の経年変動の関係を調べた.結果の一例としては,たとえば,重力波のポテンシャルエネルギーは,成層圏中層亜熱帯において,QBOの東風位相の時大きく,西風位相の時小さいことがわかった.この領域の東西風は,QBO東風の時東風が強く,西風の時東風が弱かった.このことから,背景風によるフィルタリング効果により QBO位相が成層圏中層より上方まで伝播する重力波活動度の大きさに影響を与えていると考えられる.また,セミナーでは,中間圏東風の変動と QBOや対流活動との関係も議論する.