2011 年度 第 1 回 気象学セミナー

場所 理学部 1 号館 8 階 851 号室
日時 4 月 28 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 岡本 功太
講演題目 中層大気循環の季節変化と長期変化
概要
 高度およそ10〜100kmの領域は中層大気と呼ばれる。おもに成層圏(11〜50km) と中間圏(50〜80km)に分類され、それらは大気 の構温度造などが大きく異な る。中層大気では対流圏から伝播してきた波が中層大気で砕波することによって 運動量フラックスの収束が生じ、残差子午 面循環が形成される事が知られてい る。(ダンワードコントロールの原理)。  成層圏子午面循環は主に2セルで、熱帯で上昇流、中高緯度で下降流を持つ。 冬の循環が大きく、夏半球側までせり出している。これは、主に冬半球 の西風 領域に伝播してくるプラネタリー波の影響であり、また夏半球側の亜熱帯では重 力波の寄与が大きいことを先の研究で示している。一方中間圏で は、重力波が 駆動する夏極から冬極へと向かう大きな循環が存在する。このため、中間圏では 成層圏界面とは異なる温度の緯度勾配が存在し、冬極で温 度が極大となり、温 度の極小域に対応する夏極では夜光雲などの現象が観測される。  さて、本研究では、重力波を陽に解像する高解像度大循環モデルデータ (T213L256)を用いて、中層大気の季節変化の特徴を明らかにし、そ のメカニズ ムについて考察する。中層大気には主に放射によって決まる温度勾配とそれに対 応する冬の極夜ジェットが存在する。極夜西風ジェットは、 季節進行にした がって徐々に下降していき、夏になると完全に中層大気から消滅する。この極夜 ジェットの下降システムについては様々な原因が考えら れる。例えば、1、放射 の季節変化に対する非断熱的応答、2、波の砕波に伴うドラッグに対する応答、 3、残差循環の構造変化に伴う断熱的な応答、 などがあげられる。本発表では特 に残差循環の影響について考察し、ダウンワードコントロールの原理を用いて波 の寄与を推定する。