2010 年度 第 18 回 気象学セミナー

場所 理学部 1 号館 8 階 851 号室
日時 11 月 11 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 岡本 功太
講演題目 成層圏残差循環に対するバランスと定常性の評価
概要
Brewer-Dobson 循環 (BDC) は、低緯度域で上昇流、中高緯度で下降流をもつ大循環であり、成層圏のオゾンなどの物質分布に大きく影響を与えている。この循環は、主に対流圏から伝播してきた波の砕波や散逸に伴う中緯度域でのドラッグによって駆動されていることが分かっている。これは、近似的に変形オイラー平均 (TEM) 系の運動方程式で表現される。これまでの研究では、ダウンワードコントロールの原理を応用して各季節の残差循環駆動に関するプラネタリー波、総観規模波、重力波などの波強制の寄与を、定量的に評価した。その結果、主に BDC の形状を決定しているのは先行研究通りプラネタリー波であったが、重力波強制は下部成層圏中緯度や、夏半球亜熱帯域に存在する冬循環の上昇流域に大きく影響を与えうる事がわかった。
以上の解析には、各季節で定常を仮定した上でダウンワードコントロールの原理を用いたが、定常性についてはこれまで詳しく議論されてこなかった。 本研究では、鉛直質量フラックスに対する運動方程式中の du/dt の比を定常性の指標と定義し、各季節の残差循環に対する定常性を示す。
一方、残差循環 w* は、TEM 系熱力学方程式中で非断熱加熱項との関係が存在する。これらの関係を明らかにしたうえで、熱力学のバランスにおける定常性を考えた。その結果、全季節で成層圏全般にわたって定常が仮定できることがわかった。これは、上層では主に非断熱加熱と鉛直移流項の釣り合い、下部成層圏では鉛直移流、非断熱加熱と水平移流項の釣り合いによるものであった。