Kaoru Sato's Laboratory

大気重力波の発生・伝播・スペクトル

1.大気重力波とはなにか?

大気重力波というのは、大気中の浮力を復元力とする大気の主要な波の一つで、単に重力波とも呼ばれます。物理の一般相対論に出てくる重力波と呼び名は一緒ですが、全く異なる種類の波です。

えっ、浮力、難しそうなんて思った方、大丈夫です。ある高さにある小さな空気の塊(空気塊)を上に持ち上げたとしましょう(図1-1左)。気圧は上のほうが低いので空気の塊は少し膨張しますが、現実の大気ではたいていの場合、この空気塊の密度は周りの空気よりも重いので、元の位置に戻ってきます。これは下向きの浮力が空気塊にかかったからです。しかし、持ち上げた分だけ位置エネルギーを獲得していますから、元の位置ではオーバーシュートしてさらに下に移動し、どこかで止まります。そこでは上向きの浮力がかかりますので、また元の位置に上がってきますが、そこで止まらずオーバーシュートしてもっと上に上がります。摩擦がなければこの振動は繰り返されます。これを浮力振動と呼びます。

図1-1 浮力振動と大気重力波の模式図。右図の矢印は背景風の向き、青い斜めの楕円は重力波をあらわす。

浮力振動では空気塊の振動方向は上下ですが、これが斜め上下に振動するのが大気重力波です(図1右)。浮力のもとは重力なので、重力波と呼ばれるのです。浮力が働くためには重力の方向つまり鉛直方向に空気が持ち上げられなければなりません。それは、風が山を乗り越えるときなどに起こります。積雲など強い鉛直運動を伴う現象によっても重力波は発生します。水蒸気が凝結熱を出しながら次々と雲になって上昇していくときなどにも起こります。そのほかにも大規模なジェット気流から重力波が生まれるといった、大気力学的に興味深い発生機構もありますが、それはのちほど。

図1-2は昭和基地に設置された南極初の大型大気レーダー、PANSYレーダーによる2017年1月14日から20日にかけての観測データです。上は南北風、下はレーダーで受信した散乱電波の強さ(エコー強度)の時間高度断面図です。エコー強度は乱流の強さや大気の成層構造を反映するといわれています。南北風、エコー強度のどちらにも時間と共に下向きに伝播する波状の構造が見えます。これが重力波です。

図1-2 2017年1月14~20日にPANSYレーダーにより観測された南北風(上)と鉛直ビームのエコー強度(下)。▼は対流圏界面の高さ

2.大気重力波研究の歴史

重力波は、空間スケールが小さく、対流圏では一般に振幅も弱いので、直接日々の天気にはあまり影響しないため、純粋な大気力学的興味からの理論研究以外は、1980年代に入るまでは「気象ノイズ」として扱われる存在でした。しかし、それが、80年代に入り、大型大気レーダー等高度な観測手法の開発と、コンピュータ技術の急速な進歩により、その実態が明らかにされるとともに、理論的にも、その重要性が強く認識されるようになりました。ほとんどの気象・気候予測モデルは解像度が重力波を表現できるほど高くないのですが、このときの科学的知見により、重力波の作用がパラメータとして組み込まれています(パラメタリゼーションの方法といいます)。90年代には熱帯域に視点が移り、2000年に入ってからは、極域に、さらにグローバルに視点が広がり、世界規模で観測や共同研究が行われています

また、重力波は航空機の飛行に影響するほどの強い上下流をもたらしますし、最近では、集中豪雨などの極端な気象現象を起こすことがあることもわかってきました。重力波そのものの予測は現在極めて難しいのですが、減災という意味でもさらなる研究を行う必要があります。

  • 1980年代 中緯度の時代/天気予報を高精度化
    重力波作用が、中緯度中間圏界面や下部成層圏にみられる弱風層を維持していることが明らかになりました。この重力波作用を予報モデルに組み込むことで、天気予報精度が格段に進歩しました。
  • 1990年代 熱帯の時代/大気重力波が大規模大気振動を駆動
    赤道成層圏下部にみられる準2年周期の大規模な大気振動の駆動源は大気重力波とその仲間であることが解り、大気重力波の重要性への認識がいっそう深まりました。
  • 2000年~現在 極域の時代/地球規模大気の総合的評価
    重力波も解像可能な大気大循環モデルがスーパーコンピュータ上で走るようになり、重力波の温度揺らぎを測定する高解像度な衛星観測も進み、全球的な重力波活動を捉えられる時代がやってきました。そして、気象予測モデルの予測精度向上に寄与する(つまり、私たちの予想とはかけ離れた性質を持っていた)のは極域の重力波であることが明らかとなり、極域での徹底的な観測研究が必要とされています。また、中間圏における全ての緯度帯の重力波の伝播や作用が変化することで南北両極の大気がほぼ同時に変動している(テレコネクション)可能性も指摘されています。

図2-1は、私たちが世界に先駆けて、現実的(現実ではありません)な海面水温などの境界条件を与えた高解像大気大循環モデルでシミュレートした重力波です。水平発散という量をプロットしています。ロスビー波は水平発散がほぼゼロの波なので、小さなスケールをわざわざ取り出さなくても水平発散をプロットすると重力波が見えるのです。細かい点々のようにみえるのが重力波です。南アメリカのアンデス山脈から強い重力波が出ていることがわかります。他にも対流の活発なアジアモンスーンのあたり、南氷洋の低気圧活動の強いあたり、南極大陸周辺域で振幅の大きな重力波がみえます。

私たちは大気重力波を、観測、モデルシミュレーション、大量データ解析、理論とあらゆる研究手法で研究を進め、時代の流れと共に中緯度、熱帯、海洋域、極域と研究領域を広げてきました。現在、世界に先駆けた重力波解像可能な大気大循環モデルによる研究や、昭和基地に南極初の大型大気レーダー(PANSYレーダー)を設置しての本格的な極域重力波観測研究を行っています。また、諸外国の研究者と共同して重力波の同時観測によるグローバルな重力波の変調を捉え、大気大循環モデルによる再現実験を組み合わせることで、グローバルな気候のテレコネクションの仕組みを解明する研究を展開しています。

図2-1 重力波解像大気大循環モデルにより再現された10hPa(高度30㎞付近)における重力波の全球マップと、赤線における緯度高度断面図および経度高度断面図。8月のスナップショット。

3.大気重力波の斜め伝播

大気重力波は、(ななめ)鉛直方向に振動するため、エネルギーの伝播方向もロスビー波と比べるとほぼ鉛直と考えることができます。また、ロスビー波に比べるとエネルギーの上向き伝播速度(鉛直群速度)も大きいのです。たとえば、山岳起源の重力波は、地面から約10kmの対流圏界面に到達するのに1時間もかかりません。この性質に着目し、多くの気象・気候予測モデルで用いられているパラメタリゼーションでは、重力波は、鉛直上向きにかつ瞬時に伝播するという仮定をおいています。

しかし、重力波の振動方向は、背景風の強さや大気の成層の強さによって、水平に近くなることも多く、そうすると中性大気のトップである高さ100kmに達するころには何日もかかることはまれではありません。また、重力波は鉛直だけでなく水平にも伝播する性質もあります。たとえば図2-1の南アンデス山脈から出てくる重力波は東のほうに流されているようにみえますが、実際にエネルギーが流されていることを理論的に説明することができます。

このような重力波の水平伝播はあまり注目されてこなかったのですが、重力波が平均流にもたらす作用を考えると、この水平伝播も無視できないと考えられるようになってきました。

図3-1 重力波解像大気大循環によってシミュレートされた重力波に伴う運動量フラックス(色)と東西平均東西風(等値線。実線は西風、破線は東風)。Sato 他 (2009)

図3-1は図2-1に示した重力波解像大気大循環モデルで再現された重力波の運ぶ運動量(運動量フラックスといいます)の緯度高度断面図です。赤は東向き運動量、青は西向き運動量の鉛直フラックスです。等値線は正が西風、負が東風です。重力波の運動量フラックスは重力波が砕けたり、大気摩擦で減衰しない限り保存します。したがって、この分布は水色の矢印のように重力波が鉛直上向きだけでなく斜め(緯度方向)にも伝播していることを意味するのです。

水平伝播のメカニズムは、2つ考えられます。1つは、重力波の屈折です。図3-1の等値線から読み取れるように、冬半球には強い西風ジェット(極夜ジェットといいます)があり、夏半球にも強い東風ジェットがあります。つまり、重力波の伝播する背景風には緯度方向にシアーがあります。これが重力波を屈折させ水平に伝播させるのです。

もう1つは背景風による移流です。移流というのは背景風によって流される効果のことです。山岳起源の重力波の場合、水平鉛直2次元の理論を解くと、鉛直群速度のみが大きく水平群速度はほぼゼロとなることが示されます。重力波は固有の性質として波数ベクトル方向(かまぼこ型の山があったとして、その尾根と直角方向)に群速度を持ちます。山岳起源の重力波の場合、固有水平群速度は背景流と向きが逆で同じ大きさなので、背景流を足すと正味で水平群速度はゼロとなるのです。重力波パラメタリゼーションの鉛直伝播の仮定の理論的根拠はこれです。

しかし、現実大気は3次元です。3次元の場合、正味でゼロとなるのは。波数ベクトルの方向(山の尾根や谷に直角方向)のみ(図3-2で、 )であり、波数ベクトルに直角方向(山の尾根方向)の背景流 にはそれを打ち消す群速度を持たないため、重力波のエネルギーは流されっぱなしとなります 。つまり、山岳起源の重力波でさえも流されるというわけです。

図3-2 背景風による地形性重力波の移流

私たちは、重力波の屈折は、水平伝播をもたらすだけでなく、屈折そのものが平均風に強制を与えていて、それが無視できない大きさになることも明らかにしています。

図3-3 屈折によりもたらされる重力波強制(左屈折なし、右屈折あり)Amemiya and Sato (2015)

4.重力波の発生源

大気重力波の発生源には様々なものがあります。中高緯度では山岳などの地形や、対流圏のジェット気流や前線が、低緯度では活発な対流が主な発生源と考えられています。

a.ジェット気流と山岳

南極昭和基地では、多重対流圏界面がよく観測されます。特に冬季は4重や5重圏界面が現れることがまれではありません。しかし、なぜそうなるのかはわかっていませんでした。そこで、私たちは、昭和基地のPANSYレーダーによる観測データを調べ、下部成層圏には強い慣性重力波が存在していて、これに伴う大振幅の温度揺らぎが対流圏界面として検出されていることを突き止めました。

下のアニメーションは、多重対流圏界面が観測された期間について、数値モデルによってシミュレーションされた南半球極域の重力波の発生と伝播の様子を示しています。モデルの確からしさは、PANSYレーダー観測データの比較により確認済みです。アニメーションからは、海上や南極大陸の海岸線の近くで重力波が発生し、伝播している様子が見て取れます。重力波の群速度や位相の特徴、背景風の構造から、海岸線の近くの重力波は南極大陸沿岸の急斜面から、海上の重力波は蛇行する寒帯前線ジェットから発生した可能性が高いことが分かりました(Shibuya et al. 2015)。

図4-1(アニメーション):高度17.5km (左) 南緯65度の緯度高度断面における水平発散成分。シミュレーション期間は2014年4月7日から10日の4日間

b.バランス流の自発的調節過程(共鳴理論)

重力波は最初に述べたように、非バランス流の代表的な波です。これに対し、温帯低気圧はバランス流の典型です。ところが、1990年半ばに発達した温帯低気圧から重力波が放射されるという、大気力学の理論としては衝撃的な事実が提示されたのです。図2-1にみられる南氷洋での重力波もそのようなメカニズムで発生した可能性があります。

このような重力波の発生は自発的放射と呼ばれています。そのメカニズムについて多くの理論研究がなされました。主流の考え方は、流体方程式の非線形性によりバランス流のバランス(コリオリ力と気圧傾度力のバランス)が崩れ、その後、バランス流に戻る段階で重力波が発生するのだというものです。私たちはこれに対し、新たな理論を提唱しました。

重力波の周波数はバランス流の時間スケールに比べると際立って高いという固有の性質があります。このため非バランス流とバランス流は相互作用しにくいと考えられています。しかし、重力波のこの固有の性質は流れに乗ってみたときの周波数の話です。バランス流が強くて重力波の周波数を大きくドップラーシフトさせている場合、見かけの重力波の周期がバランス流と同じぐらい長くなる可能性があります。そうすると、バランス流と重力波に共鳴が起きて、重力波が発生するというのが新たな私たちの理論です。これをくりこみ群の方法で定式化して発生する重力波を理論計算し(図4-2右)、ジェットを与えた重力波発生のシミュレーション(図4-2左)と比較してみるとよく似ていることがわかります。これはバランス流との共鳴で重力波が発生するという私たちの理論を裏付けるものです。

1980年代に行なわれた大型大気レーダーによる観測研究によりジェットから出てくる重力波の周期はなぜかとても長いということがわかっていたのですが、この理論でしたら、この特徴を説明することができるのです。また、共鳴によりエネルギーが重力波に移ると、バランス流は減速し、その結果、重力波との共鳴も起こらなくなり、重力波の放射は止まるという過渡的な自発的放射の特徴も説明できます。

私たちはこれが自発的放射の本質だろうと考えています。この理論では重力波放射の強制も式で表すことができるのですが、興味深いことに、それは先行研究で考えられていた、バランスからのずれで記述される重力波放射の強制とよく似た形をしていて、先行研究の物理的妥当性を裏付ける結果ともなっています。

図4-2 東向きジェットの強さ(等値線)と、発生した重力波(色)の東西高度断面図。(Yasuda他, 2015)

c.境界層の慣性振動

私たちはこれまで指摘されていなかった重力波の発生機構も見つけています。太陽放射の1日変化を与えて大気境界層のシミュレーションを行ったところ、慣性振動の周期が1日周期または半日周期に一致する、それぞれ30度、90度において夜間境界層の慣性振動の振幅が増大することを見出しました。また、これは慣性振動と日変化する太陽放射の間の準共鳴現象として理解できます。このとき、大気境界層の上端から慣性周期に近い重力波が励起されていることも分かりました。

図4-3 緯度30度における1日周期で変化する境界層(東西風)の時間高度断面図。この周期は緯度によって異なり、60度では16時間、90度では12時間となる。この緯度では慣性周期が1日周期なので、共鳴が起こり、東西風の振幅が増大している境界層の上端は高約1200m。その上に時間と共に位相が降りてくる慣性重力波が見える。Shibuya他 (2014)。

5.重力波のスペクトル

大気大循環モデルの高解像度化が進み重力波もシミュレーション可能となったとお話しましたが、シミュレーションはあくまでバーチャルな世界、リアルの世界と違っている可能性もありますですから、モデルシミューレションの妥当性は高解像度の観測データで検証しなければなりません。重力波の場合、観測も難しいので、モデルの検証に使える観測データは限られています。私たちは中緯度の大型大気レーダーの代表であるMUレーダー観測との比較を行ないました。

図5-1の左はどちらも南北風の時間高度断面図ですが、上はMUレーダー観測、下は大気大循環モデルによるシミュレーションです。高度20kmより上に時間とともに位相が下がる波状構造が見て取れます。周期や鉛直波長だけでなく振幅もよく合っていることが確認できています。つまり、このモデルは重力波を非常によく再現していることが検証できたのです。

次に、モデルの強みを生かし、周波数パワースペクトルの緯度による違いを調べてみました(右図)。赤の点線は左が1日周期、右が半日周期です。赤い実線はそれぞれの緯度での慣性周期を示します。慣性周期が無限大となる赤道付近を除き、どの緯度でも慣性周期付近にスペクトルのピークが見られます。MUレーダーのある35度付近で20時間付近にピークが見られますが、地球の自転の1日周期なのではなく、慣性周期(35度では約21時間)に卓越するピークなのだということがわかっています。

図5-1 左上はMUレーダー観測による南北風の3週間連続観測。左下は重力波解像大気大循環モデルによる南北風の20日間シミュレーションデータ。右は重力波解像大気大循環モデルによる各緯度(縦軸)での南北風の周波数スペクトル。赤実線は慣性周波数。赤点線は左が24時間周期、右が12時間周期。(Sato他,1999)

重力波の取りうる周期は流れに乗ってみたときの固有周期として、浮力振動周期から慣性周期の範囲です。浮力振動周期は対流圏では約10分、中層大気では約5分。慣性周期は緯度のみの関数で、たとえば緯度30度では24時間、極では12時間です(図5-1右の赤い実線)。つまり重力波の帯域はとても広いのです。地上を除き、重力波帯域全体のスペクトルを調べられる長期間のデータはほとんどありません。さらに、重力波のとりうる鉛直波長は数百mから無限大までですから、重力波のスペクトルを求めるには鉛直高解像度の観測が必要です。

南極大型大気レーダーであるPANSYレーダーは、2012年5月から連続観測を続けています。大型大気レーダーは対流圏や成層圏だけでなく、中間圏も高分解能で観測できるのが特徴ですが、中間圏の観測は太陽放射がある時間帯、つまり昼間しかエコーが受かりません。ところが、南極域では夏は白夜となり1日中太陽放射が当たること、また、この時期極中間圏雲が発生することから、夏季極域中間圏エコー(PMSE)と呼ばれる強いエコーが連続的に受かるのです。つまり、極域では夏の期間数十日間にわたり、ほぼ連続に中間圏の観測ができるのです。

図5-2 高度84~88kmにおける中間圏の(a)東西風と(b)鉛直風の周波数パワースペクトル。横軸は周期8分から20日の範囲を示している。(c)東西運動量の鉛直フラックスの周波数スペクトル。緑(上)は2015~16年、青(中)は2014~15年、黒(下)は2013~14年夏季のデータ。(Sato 他,2017)

図5-2(a)と(b)は、それぞれ、中間圏の水平風と鉛直風の周波数スペクトルを示したもので、慣性周期(約13時間)より短い周期で周波数の-2乗、-1乗に乗る形をしています。また、大型大気レーダー観測では重力波に伴う運動量フラックスが精度よく推定できます。これをスペクトルで表したのが図5-2(c)です。これまで周期の短い重力波が多くの運動量フラックスを伴っていると想像されてきたのですが、重力波としては長めの1時間から1日の周期成分が多くの運動量フラックスを持っていることが分かったのです。

図5-3は同じくPANSYレーダーによる下部対流圏の周波数スペクトルです。黒が東西風、赤が南北風、青が鉛直風です。鉛直風は中間圏とよくにたスペクトル形状をしていますが、水平風スペクトルは-2乗とよく形は似ているものの、よく見ると―2乗に比例する周期帯の長いほうの端が約7日と、中間圏に比べると長いことが分かります。

これは慣性周期から7日までの長い周期帯のエネルギーが、中間圏と異なり、ほかの周期帯に比べてとても大きいのです。これはこの長い周期帯を構成する波が重力波とは異なることを意味します。これは Charney and Drazin の定理という、小さな(惑星規模でない)ロスビー波は成層圏以上に伝播できないという理論的特徴の表れと考えられるのです。

図5-3 PANSYレーダー長期観測データに基づく下部対流圏の周波数スペクトル(Minamihara他,2016)

  1. 中層大気大循環
  2. 大気重力波の発生・伝播・スペクトル
  3. 成層圏突然昇温と成層圏界面ジャンプ
  4. 中間圏の力学:重力波とロスビー波の協働
  5. 大型大気レーダー国際共同観測による南北半球間結合の研究
  6. 南極昭和基地大型大気レーダー計画(PANSY)
  7. 高解像中層大気大循環モデルによる研究(KANTO)
  8. アジアモンスーン高気圧と対流圏・成層圏結合