PEACE-A,B航空機観測
<概要>
アジア域における広域大気汚染の現状については、TRACE-Pの観測目的同様、依然解明されていない問題が存在しています。またこの地域は、典型的なモンスーン気候でもあることから、季節により風向・風速・気圧配置などの気象場や汚染物質の排出量、また光化学反応の活性度により、オゾンなどの生成される物質濃度はさまざまです。このことから物質の輸送・反応過程にも季節による違いが生じ、異なる季節において観測を行うことが必要とされていました。そこで我々は、2002年冬季(1月)と春季(5月)異なる季節において、宇宙開発事業団(NASDA)と東京大学先端科学技術研究センターを中心に、Pacific
Exploration of Asian Continental Emission( PEACE-A,B)を実施しました。観測には、(株)ダイアモンドエアサービスが所有するGulfstreamUが使用され、名古屋と鹿児島の空港を拠点にそれぞれ十数回のフライトを行いました。またPEACE-B期間には、アメリカ大気海洋庁(NOAA)が中心となり、アメリカ合衆国西海岸の海洋上において航空機観測を実施し、アジアからの汚染物質の長距離輸送の現状、メカニズムを解明する目的として多種多様な成分の測定が行われました。この観測は、我々のPEACE-B観測と連携をとり合いながら進められ、日米共同プロジェクトとしてその成果が注目されています。
(左写真)観測に使用された(株)ダイアモンドエアサービス所有のGulfstreamU
PEACE-A観測は12月中旬よりアップロードが開始され、我々を含む国内外の研究チームが独自に開発した測定器を、GulfstreamUに搭載する作業が行われた。我々の研究グループは、総反応性窒素酸化物(NOy),オゾン(O3),一酸化炭素(CO)の測定器を独自に開発しており、世界的に見ても精度の信頼性は高い。またカリフォルニア大学(UCI)により炭化水素類(HC)、ニュージーランド水圏・大気研究所によりエアロソル、国立環境研究所により硫黄酸化物(SO2)・二酸化炭素(CO2)が同時に測定されており、得られたデータを宇宙開発事業団が取りまとめることで、各研究者が有用な研究を円滑に遂行することができています。
(左写真)研究者によるフライト最中の測定器のオペレーション。図中の測定器は、化学蛍光法を用いたNO,NO2,NOy,O3測定器。研究者前面に設置されている液晶パネルにより、リアルタイムで各成分の濃度が表示される。オペレーターは、状況に応じた操作を行い、また地上に待機する研究者との交信により、フライト経路の変更等をパイロットに伝える。
(下写真)
名古屋空港、三菱重工の航空機格納庫内でのダウンロードの様子。測定器や予備パーツ、コンピュータ類を梱包し、研究室へ輸送する。