赤外分光法を用いた大気微量成分観測
<概要>
成層圏・対流圏に存在する多種多様な微量成分を観測する手段として、スペクトル法があります。太陽からの放射には、可視領域を中心に、紫外、赤外の波長域のスペクトルが含まれており、地球の大気圏外に到達しています。これらのスペクトルは、地球表面に到達するまでの大気圏内に存在する化学成分により吸収され、地上に到達したスペクトル強度は減衰しています。吸収されるスペクトルの波長は成分ごとに異なり、それぞれの成分で特有の吸収域を持っています。この吸収スペクトルを地上で測定することにより、どの成分が観測点上空に存在し、吸収量の度合いからどれくらいの濃度存在するかを定量することが可能となります。
我々の研究室では、北海道の母子里、陸別に設置されたフーリエ変換型赤外分光計を用いた地上での連続観測を行っており、多種多様な成分についての解析を行っています。特に、成層圏の成分では、O3(オゾン)、HNO3(硝酸)などオゾン層の破壊に関与する成分について、また対流圏では、CO(一酸化炭素)、HCN(シアン化水素)、C2H6(エタン)等、温室効果物質や人為起源汚染物質のトレーサーなどの役割を果たす成分を中心に解析を進めています。近年ではNASAの解析プログラムが改良されたことを受けて、大気中の気柱全量のみの導出だけでなく、成層圏と対流圏、また下部対流圏と上部対流圏といったように、それぞれの高度領域での物質分布を導出することが可能となっています。