大気微量成分測定器の開発・改良実験
< Proton Transfer Reaction Mass Spectrometry(PTR-MS)>
Proton Transfer Reaction Mass Spectrometry(PTR-MS)の装置の概要を図1に示します。
PTR-MSでは、イオン源で生成したプロトンハイドレイト(H3O+)による、以下のような陽子移動反応 (proton-transfer-reaction) を基礎としています。
R + H3O+ → RH+ + H2O
ここでRは測定したいVOC(Volatile Organic Compound : 揮発性有機化合物)を示します。この反応により生成されるRH+イオンの反応チューブ(Drift
Tube)終端における濃度[RH+]は、以下のように表せられます。
[RH+] = [H3O+]0 (1−exp[−k[R]t])・[H3O+] k[R]t
従って、イオン反応の親イオンであるH3O+濃度と、生成したRH+イオン濃度を四重極型質量分析計(QMS)で測定することにより、測定対象であるRの濃度を高い時間分解能で求めることが可能となります。
[R]
= 1/(kt) [RH+]/[H3O+]
PTR-MSではソフトな陽子付着反応を利用するので、VOCが反応チューブ内で壊されることなく検出できます。また、ガス・クロマトグラムを使用することなく、VOCを選択的に定量することができます。加えて、比較的高い時間分解能での測定が可能なので、濃度変動が激しい発生源近く(都市域)での観測が可能となります。