歳は取るもので入門時に気持ちが悪かったあれこれが急に理解できたりする。たとえば「水平流速に鉛直構造がない」ことをこちらの業界では「順圧」と呼ぶ。後者のそもそもの定義は「密度が圧力だけで表せる」なのにどうしてそれが流速の形容詞なのか、とか。それで最近分かったことが「微分をしていい理由」。微分は f(x) と f(x+Δ) の差を取って Δ を小さくしていく作業なので、たとえば海面高度だと波があってしかもそれが重力だったり表面張力だったりといろいろなスケールの波長なもんだから Δ を小さくしてもでこぼこしてて Δ = 1000 m と Δ = 1 m と Δ = 0.001 m でぜんぜん違う値になるかもしれない。それなのに何故水平微分 δx なんて計算できるのか。
たぶん次のような理由。
こちらの業界で観測する量はことごとく「赤い」パワースペクトルを持つ。つまり波長が短いほどエネルギーが弱くなる。ここから波長が小さいものは波長が大きいものには(あまり)影響を与えないことが期待される。だから微分をとるときにはある程度の平滑化を暗黙におこなってから微分をとっているのであろう。そうすれば表面張力の心配がなくなる。
ではなぜパワースペクトルが赤くなるか、ということは説明されているんだろか。直感的にはある程度の慣性があってあんまり散逸が強くない(つまりレイノルズ数が大きい)システムではそうなりそうな気がするが、これもたぶんどこか書いてあるのだろうな。
もうひとつ妄想すれば、微分が暗黙の平滑化を行っているならば微分演算子をいじる形のパラメタリゼイションがあっても面白い。これまたどこかにあるような気がするが。