本当はオンラインでなく実地に参加したいのだが無理なので EGU21
に時差をおして参加した。自分の発表は悲酸の一言に尽きるが、めっけもんはTailleux
氏の熱力学講義で、どうやら大循環論のエネルギー論に解決をみたよう也。しかもエントロピー論と
APE 論にもっていく手腕が鮮やか。前者はBannon and Najjar
(2018)。後者の方が正確らしい。しかし氏の2013 の JFMの 4.2
節に明記されるよう APE
の任意性が気になる。エネルギーは結局保存する「ように」人間が決めるもので自然が決めるものではないから解釈論?
氏は昔 γn
に異議を唱えていたような気がするが今探してみるとそんな論文が見当たらない。人違いであった(1 Sep
2021)。 むしろそうなる条件もあるそうで、この hydrography
で温度塩分偏差を最小にする手法は面白い。
海洋のエネルギー論は Warren (2006) で極まりでそれに素直に第二法則を加味すると Bannon and Najjar (2018) になる。いろいろな仮定で多少数字は動くが大雑把に言って単位面積当たり 35.23W の熱を「平均」290.18 K で受け取り、35.42 W の熱を「平均」288.33 K で放出している。出ていく熱流のほうが多いのは風と潮汐のエネルギー注入のせい。結果カルノー風に定義した「効率」はたったの 0.6% 強で、これに入る熱をかけた 0.2 W は風と潮汐とコンパラ。
ふと気づいたがこれは「海洋大循環」のエネルギーではなくて「海洋」のエネルギー。前者は運動エネルギーの収支を考えなければいけないのではないか。運動量の散逸はエネルギー的には熱になってすなわち海洋の内部エネルギーになるから上記の「海洋のエネルギー論」には表れない。「海洋大循環は何がエネルギー源か」という問いには結局位置エネルギーからの入出力と内部エネルギーからの入出力を議論すべきでこれって Wunsch and Ferrari (2004)(と続編) に戻ってないかい。
ときに Wunsch and Ferrari (2004) に引用されている地熱は 0.05 TW (Huang, 1999) で後ほどの見積もりは 32 TW (Huang, 2010 だが Bannoun and Najjar (2018) の孫引)。よく引かれる Adcroft et al. (2001) で 18 TW、Emile-Geay and Madec (2009) で 32 TW。これはなんと風の 64TW と同オーダーで潮汐のO(1)TW よりずっとでかい。ちなみに表層の熱はO(10000)TWがバランスしているわけでまあなんとも。