学部四年で卒論というものをやりに阿部寛治さんの研究室に入門したら、「卒論テーマ集」みたいな冊子があってそこに『カオスのソリトン展開』だったか『ソリトンのカオス展開』だったかというネタがあったという記憶がある。どっちもぐぐっても出てこないので勘違いかもしれない。
今日新着論文を見ていたらカオス展開という語の入った論文があって驚いた。どうやら初期値敏感というカオスではなくて確率微分方程式の数値解法のひとつに見える。宣伝を鵜呑みすればモンテカルロよりずっと効率よく時間発展微分方程式の係数の不確かさの伝播が見積もれるとか。内部波の非線形相互作用とか確率的に扱えんだろか。
最後にアベカンにあったのはもう 10 年くらい前のような。私大はあのときもう退官していらしたのか思い出せない。ぐぐってみたらそこの私大生が「阿部寛治先生は授業受けなくても単位をくれるよ.」とか書いてるし。久しぶりに盃ごしに『ソリトンのカオス展開』について訊いてみたい。
ちょいとフォローアップしたのでまとめ。(5 月 10 日加筆)
カオス展開とは多項式カオス展開で、無料で読めるものではXiu and Karnadakis (2002)が良さげ。例えば
\[\nabla K(x;w) \nabla u(x;w) = f(x;w) \]
境界で \[ u(x;w) = g(x;w) \] なんかが解ける。\(x\) は空間座標で\(ω\)は確率変数すなわち誤差。係数に誤差があるような方程式が評価できる。
やり方は \(K, u, f, g\) を多項式カオス展開する。こんなの。
\[ c_0 \phi_0 + \Sigma_{i1=1}^\infty c_{i1} \phi_1(\zeta_{i1}(\omega) + \Sigma_{i1=1}^\infty \Sigma_{i2=1}^{i1} c_{i1,i2}\phi_2(\zeta_{i1}(\omega),\zeta_{i2}(\omega))+\cdots \]
ここで \(\phi\) が多項式で多次元のものは一次元の積でよいらしい。このあたりの細かい実装は Papudopoulos and Giovanis (2017) が詳しい。\(\phi\) は正規直行基底になってしかも内積を取る時に確率分布の重みがつくという手際の良さで、あとは数値的に評価できる。鍵はKarhunen Loeve 展開らしいがそのココロは EOF。滅法収束が早いというのが売りらしい。モンテカルロ不要。