T 君のこと




18 Jun 2018

外部資金には間接経費というものがあってもらったお金のうち決まった割合は研究には直接使えなくて所属する研究機関が遣う。ここ UCSD はなんとその割合が 55% だと云う。いくら何でも「支援」にこれは多すぎやないかという疑問を解決すべく自分で研究機関を作ってしまった T 君に21 年振りに会った。

最初はここで楽しくポスドクやって自分で外部資金を取るようになったらこの疑問がふつふつと湧いてきて周りの人に相談したら、じゃあ自分でやっちゃいなよってことでやってみた、と。最初はやはりイバラだったようだがここ数年は軌道に乗ってなんと 30 名以上の研究者が所属してる。そのココロは彼の会社は間接経費を下限の 10% にして出勤義務もなく 100% 在宅勤務を認めているそうな。なのになんでウェブサイトが死に体なの、と聞くと流石にこれ以上研究者が増えると、現在2名で回している支援業務が追っつかないからあんまり宣伝したくない、と。いわく生まれ故郷のドイツに居たらこんなことやってない、やはりこの国はスタートアップを大切にする風土があっていろいろと良い出会いがあった、と。

かく云う彼は小学生くらいの時兄貴とボートで漕ぎ出して湖の底近くの水温を測ってみるような「観測好き」で、ポスドクやっている時も観測航海に参加して非常に楽しかったらしい。画面に出てくる中層水やら底境界層に一喜一憂するというほんまもんの海洋物理肌である。なんで研究者にならないの、と聞くとやれ資金やれ論文って何年かやってたら海洋学が楽しくなくなってしまいそうなので、だって。誰かが言っていた「一番好きなことは仕事にしない」の知恵か。彼が資金なり論文 に beg という単語を使っていたのが耳に痛い。

これから一年ほどかけて支援業務をほぼ全て電子化したらウェブサイトも更新する予定だそうで。