回転水槽実験




19 Apr 2017

いまどき「ろくろ」よりも「レコードプレーヤ」の方が入手しやすいので、これを使って回転水槽実験をやりたい。やはり王道は傾圧不安定実験なのだろうと思うのだが、先人の記録をあれこれ見てみてもレコードプレーヤでやった例がない。ここで殺気を感じるべきだったが相変わらずの無策でとりあえずやって見る。

レコードプレーヤに丸いタッパーウェアを載せて、内側に菓子の円缶とチューハイの空き缶を載せる。作業流体は水以外に考えられず、外には熱湯をチューハイ缶には氷水を入れて回す。あっという間に乱流になる。しかも氷が一気に溶けてしまう。なるほど底を断熱する必要があるらしい。DIY屋で一番安い発泡スチロールを買ったら厚さが 1.7 cm もある。これを切って接着剤で貼付けたらお湯の中で菓子の円缶が浮いてしまう。底に貼付けてやろうかとおもったらタッパーが接着剤でつきにくい材質最右翼のポリプロピレン。しかも水中での使用は非推奨。泣きながらネジ穴加工して固定した。でもやっぱり乱流。 文献(PDF注)によれば温度ロスビー数がある程度大きくなくては不味いようだ。水深や温度は分子に一乗で入っているのに回転数が分母に二乗で入ってきているのでつまり回転早すぎ。ここまできてようやく何故レコードプレーヤでやった例がないのかを理解した。なんとか回転数を落としたい、とプレーヤを分解する。ベルトのかかっているプーリーの径を変えてもせいぜい 20% くらいしか遅くなりそうもない。モータは SANKO 9V 12V CW MO9S12U13-3 60229T などと型番らしきものがあるがぐぐっても何も分からない。そもそもレコードプレーヤの回転数は音質に直結するから電源電圧くらいでは駄目だろうなと思いつつスライダックを借りてきて 50 V から 120 V くらいに変圧してみるが見事に一定回転である。 もはやこれに頼るしかないか、と思いつつスライダックをぐりぐりやっていると、昔回転水槽でイワした大ボスが「少し遅くなってる!」という。よくよく見てみると 30 V から 35 V くらいに電圧と回転数が両方変化する狭い狭い窓があった。さっそく 1 分 12 回転くらいに落として実験してみると渦渦と波数 5 が出てきた。

同じような苦労をしている人がいるやもしれないと思い記す次第。大ボスのあの観察眼がなければこの袋小路から脱せなかったと思う。計算機シミュレーション以前の職人芸を垣間見。

(2017/5/14 追記) 後日談だが、結局はきれいに出なかった。いろいろ試すに最大の理由はレコードプレーヤの回転軸が鉛直から外れてしまうせいで、首振り運動が出てそれにともなう強制共振がおもいきり地衡流を汚染することと思われ。あとプレーヤが載っている机が弱いと人が手をついただけで流れが乱れてしまう。でもせっかくの実験で「触るな」も野暮。結局もっとしっかりした台でやるなりなんなりコストをかける必要がある。お手軽にやるもんやない。