パワースペクトルの自由度




25 Sep 2014

\# スペクトルのピークだけで語る事の危険性とかそういうことは置いておいて。

ご案内の通りだらっと FFT やってピリオドグラムを求めても自由度が 2 で嬉しくない。自由度を増やす方法は三つほどあって

  1. 周波数空間で平滑化する。
  2. 時間空間の信号を分割してそれぞれのピリオドグラムを平均する。
  3. データ窓

上の二つは NR の (13.4.7) の下(P.552)に書いてある通り、K 周波数の移動平均をすれば自由度が K 増えるし、K 部分に分割しても自由度が K 増える。3. の場合の自由度は如何ほどか。NR では (13.4.17) 直後に

(For Bartlett, Hann, and Welch windows), the effective window widths and the effective window rise/fall times are both of order N/2

とあるくらいではっきりしない★。

日野 (1977) の (11.50) が出発点ではないか。この段階ですでに (11.49) からの近似式であるのに注意。(11.26a) と (11.52) をしげしげとながめて自由度は \(2 B_e T\) (11.69) となる。\(B_e\) はウィンドウ等価幅で多分 equivalent noise band width と同じ。具体的な求め方は (11.60) から (11.66) に詳しい。バートレット窓が無いから自分で求める。

幅が \([-T, T]\) で高さ 1 とすると、そのフーリエ係数は

\[ a_n = -\frac{1}{T}\int_0^T \frac{x}{T}\cos\frac{n\pi}{T}x\mbox{d}x = \frac{1}{\pi^2 n^2}\{1 - (-)^n\} \]

と解けてしまう。奇数の逆数の二乗和は π2/8 に収束するから、\(a_0=1/2\) に気をつけて n の負の無限大から正の無限大の和はちゃんと 1 になって (11.61) を満たす。奇数の逆数の4乗和は π4/96 だから、\(a_n\) の二乗和は 1/3 に収束する。結局 (11.64) を用いて \(B_e=1.5/T\) となった。NR の云う N/2 で \(B_e=2/T\) だからそう遠くはない。

1 Dec 2014 追記

Biltoft and Pardyjak (2009) によれば、

Koopmans, L.H., 1974: The Spectral Analysis of Time Series, Academic Press, 366pp

には、出ているらしい。