金星の雲(主に濃硫酸の液滴から成ると考えられている)は金星大気中の高度 45-70 km に存在し、全球を隙間なく覆っている。この雲層は金星が吸収する太 陽光の大部分を吸収するだけでなく、温室効果によっても金星大気の温度構造に 影響を与えている。金星大気の大循環を議論するためには雲層の精密な取り扱い が必要となる。これまで金星雲には時空間変動が少ないと考えられてきたが、 Venux Express の観測により緯度方向に全光学的厚さで 2-3 倍程度の変化が存 在することが明らかとなり、こうした空間分布と大気大循環の関係も問題になり つつある。今回は、金星 GCM の改善に向けた放射伝達モデル構築の試みから、 金星雲のモデリングについて簡単に紹介する予定である。