春一番の発生と極東における冬季ストームトラック活度の年々変動との関係を調 べた。ストームトラック活動は再解析データの移動性擾乱に伴う極向き渦熱輸送 によって評価した。例年より冬のストームトラック活動が活発(不活発)な年には、 例年より速い(遅い)春一番の発生が観測される傾向にあった。また、このような 年は季節進行に伴うストームトラック活動の真冬の振幅低下が不明瞭(明瞭)にな る傾向があった。次に気候モデル中の極東冬季ストームトラック活動の再現性を 評価するメトリックを定義した。これを用いて第3次結合モデル相互比較プロジェ クト(CMIP3)で用いられた気候モデルの現在気候におけるストームトラック活動 の再現性を評価した。良いメトリックを示す気候モデルのアンサンブル平均は、 温暖化時の真冬のストームトラック活動が現在気候より活発になる傾向を示した。 この活発化は過去の研究によって予測されている冬季東アジアモンスーンの弱化 に伴うものであると考えられる。また、春一番の発生が21世紀において20世紀に 比べて速くなることを示唆している。