気象学臨時セミナー(学位論文提出予備審査)

場所 理学部 1号館 中央棟 3階 336号室
日時 10 月 3 日 (水) 13:00〜14:30
講演者3 宮川 拓真 さん(先端科学技術研究センター)
講演題目3
東京における大気中微小エアロゾル 光化学生成と輸送
概要

 大気中の微小エアロゾル(<~1μm)は、直接大気に放出されるほか、大気中での化学 反応により二次的にも生成される。この微小エアロゾルは全球・領域規模の大気質(視 程悪化や健康被害など)や気候変化(正負の放射強制)に影響を与えうる。その中でも有 機エアロゾルは存在量が大きく、組成が多様なためにその性質も多様である。従っ て、その挙動と変動要因の理解はエアロゾルの大気質や気候変化への影響を評価して いく上で重要である。過去の研究において、夏季に起こる光化学スモッグ(高濃度オゾ ン)中では、同時に微小エアロゾル(特に有機エアロゾル)も高濃度となるという報告が なされており、光化学スモッグは夏季の微小エアロゾル濃度を大きく変動させうる現 象である。しかしながら、エアロゾル測定に関して、オゾンと同程度の時間分解能が ないことや従来まで用いられてきたオフライン分析に特有の問題点(サンプルの変質な ど)から、光化学スモッグ中の微小エアロゾルに関する先行研究では定性的な結果が多い。

 夏季の関東域においては、東京都心部からの汚染空気塊が光化学酸化を受けながら 海風により郊外域へ流入し、関東域の広い範囲で高濃度オゾンが観測される。2004年 夏季に東京とその郊外域において2点同時観測を行い、微小エアロゾルの変質過程と輸 送に関する研究を行った。本研究で用いたエアロゾル質量分析計(AMS)は、数分の時間 分解能でエアロゾル粒径別組成(主要な無機・有機成分)を測定可能である(従来法の弱 点を克服)。AMSから得られる質量スペクトルを詳細に調べることで、有機エアロゾル の組成に関する情報も得ることができる。発表では光化学酸化に伴う微小エアロゾル 及びその有機成分の組成の変化と排出インベントリと観測データを用いた都市域から 郊外域へのオゾンと有機エアロゾルの輸送フラックスの推定に関して報告する。