2006 年度 第 15 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 9階 936号室
日時 1 月 11 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 石坂 賢嗣
講演題目
定常ロスビー波の伝播に対するジェットの重要性について
概要

 ある地点で起きた気象変化(気圧、気温など)が、遠く離れた地点の気象変化と 関連をもって変動する現象をテレコネクションといい、それが引き起こす気圧な どの偏差分布はテレコネクションパターンと呼ばれる。代表的な北半球中高緯度 のテレコネクションパターンとしては、北大西洋振動(NAO)、太平洋/北米 (PNA)パターン、ユーラシアパターンなどが知られている。こうしたテレコネ クションパターンは、定常ロスビー波の伝播として一般に解釈されている。

 Hoskins and Ambrizzi (1993)では、線形定常ロスビー波の群速度伝播は、全波 数Ksの極大域に向かって屈折する傾向にあることを示した。ロスビー波はジェッ トの周辺に捕捉され、遠く離れた下流側にまで伝播することを示した。さらに順 圧モデルを用いた数値実験から、ジェットは実際にロスビー波伝播の導波管とな りうることを示した。彼らの結果からはテレコネクションパターンに関しても ジェットの存在、特にその東西非一様性の重要性が示唆されている。

 Branstator (2002)は、実際の観測及び全球モデルのデータを用いて、気候平均 でのジェットが持つ東西非一様性が、各地域で見られるテレコネクションパター ンの構造に影響していることを示した。はっきりとした導波管をもった南アジア の亜熱帯ジェット上では、ロスビー波はジェットに捕捉され、下流側に遠方まで 伝播している。そのため、テレコネクションパターンは東西に伸張した構造をし ている。一方、太平洋中部ではジェットが弱く、導波管がはっきりとしていな い。そこでは、ロスビー波はジェットに捕捉されにくい傾向にあり、テレコネク ションパターンは南北に広がった構造をしている。

 今回のセミナーでは、上記の論文の紹介、研究計画について述べる。