2005年の5月の状況と夏から秋の予測実験結果について



1) 今年(2005年)の1月中旬に北極振動が急にマイナスになり(第1 図)、北極の寒気が中緯度に入りやすく、冬が長く続いた。このためオホーツク海や日本近海の海の水温が1〜1.5度程度低く(第2図の日本近 海を参照)、すでにオホーツク高気圧も強くなっている。そこから冷涼な風が東北の太平洋側に沿って入り込む<やませ> 現象のために5月でも寒い。海の状態は長期に続くことから、こうした状況は続くことが予想される。東北、北海道など北日本の地域はこれから冷害などに気を付けるべきであろう。

(第1図)


(第2図)



2) 熱帯太平洋では<エルニーニョもどき(Pseudo El Nino)>の状態が続いている(第3図)。このためにインドネシア周辺では大気の上昇流は弱く、むしろ下降気流気味になる。下降する一部の気流はフィリッピン周辺で上昇流を強めるため、この夏の小笠原高気圧は強めになるはずである。フィリンピン沖で上昇した気流は上海、沖縄、西日本付近で下降流となり、特に西日本は暑い夏になる可能性がある。 以下の3)で予測するようにラニーニャが発生する可能性もあるが、この場合も東アジアは暑い夏になる可能性がある。これはフィリッピン沖の水温が上昇することで、上昇気流が強まることが予想されるからである。しかし、2)で述べたようにオホーツク高気圧の強めであることを考慮すると日本付近では梅雨が長びき、 北日本は冷夏となる可能性がある。今年の夏は北冷西暑のパターンが一番起こりそうである。

(第3図)


3) 地球環境フロンテイア研究センターの気候変動予測研究プログラムで羅研究員が地球シミュレーターを用いて行なった大気海洋結合大循環モデルによる予測図(パワーポイントによる第4図)を解説する。これは5月1日の状態から18ケースのアンサンブル予測を行った平均描像である。この予測実験ではエルニーニョが終息し、ラニーニャが発生するようになっている。英国気象局も同様の予測をしているが、モデルバイアスの可能性もあるので注意して利用すべきである。大部分の研究機関では弱いエルニーニョないしエルニーニョもどきの状態を予測しているからである。もし、ラニーニャ が発生すれば東アジアは暑い夏になる。たしかにモデル予測でもJJA(6月 から8月)に中国南部は高温傾向、日本近海の冷たい海水温のために日本周辺は冷夏、小雨傾向になっています。SON(9月から11月)には日本付近は冷夏傾向が持続し、降水量は多めになっている。

これらはあくまで研究レベルの解説と予測結果であり、注意して利用すべきである。


(第4図-1)



(第4図-2)