2005年12月の豪雪について
Q: とても寒い日が続きますね。日本海側では大雪です。気象庁の暖冬予測もは
ずれました。どうしてこういう状況になったのでしょうか。
A: 寒波が吹き込みやすい状況になっていることと日本近海の海水温が高めで
あったことの二点につきると考えます。
まず、今年は暑い夏の後、晩秋まで暖かでした(10月に一時寒くなりましたが)。このため日本近海
の海水温は高い状態が続きました。(下図)
(9月中旬から12月中旬までで平均した海面水温の異
常)
現在でもオホーツク海では2度以上高いところが残っています。このように海水温が高い状況では大陸
からの乾いた季節風に、効果的に水蒸気を補給することができます。たっぷり水蒸気を含んだ大気が上昇し日本海側で雪となって降るのです。
熱帯太平洋では、6月頃にエルニーニョ的な状況が完全に終息し、ラニーニャに向かう傾向が強まりま
した。現在は東太平洋の熱帯域の海面水温は1.5-2度程度低く、ほぼラニーニャになったと言って
よいでしょう。
(下図)
西経120度、水深100メートルあたりでは
既に通常の状態に比べて3度くらい水温が下がっています。(下図)
熱帯太平洋における水温の状況(上)。1992–2003年の平均からのずれ(下)。 (From
NOAA Climate Diagnostic Bulletin)
これに呼応して貿易風も強まり,西太平洋に暖かな海水をどんどん貯めています。このようにラニー
ニャの傾向が強まると、西太平洋の水温は高めになり、海上の気圧は低めになります。従って大陸のシベリア高気圧との気圧差が増して、冬の季節風はより強く
なるのです。
結局、この西太平洋の状
況と相俟って、強い季節風が日本海でたっぷり水蒸気を補給されて裏日本に豪雪をもたらしていると言えそうです。この状況はエルニーニョ的な状態が終息して
ラニーニャ的な状態に移行した95−96年に似ているようです。
北極振動の指標(北極付近の気圧とそれを取り囲む中緯度の気圧の差)は11月下旬から急に強い負の
値を示しており、このことは北極の低気圧が弱まり、代わりにアリューシャン低気圧が強まっていることを示しています。(下図)
この低気圧に西方から巻き付く形で上空では偏
西風が蛇行し、極域の寒気を日本付近に運んでいます。(下図)
北極振動が強い負をしめしていることは、むしろ今回の寒波の原因というよりは季節風の強化の結果、
ストームが強化され、それがアリューシャン低気圧域に蓄積して、これを維持、強化しているためと考えられます。いずれにせよ強い寒波の襲来と整合的になっ
ています。
おそらくこのような<安定した>状況はまだまだ続くでしょう。38豪雪、56豪雪のような状況にな
る可能性もあり、豪雪地域では要注意です。
長期予測になりますが、ラニーニャ
がこのまま進展すると,西太平洋の海水温はどんどん上昇しますから、2006年の夏は小笠原高気圧が強まり、暑くなることが予想されます。西太平洋におけ
る台風の発生数も平年よりは増えるものと予想されます。