南シナ海通過流の研究


 


 インドネシア通過流は、西太平洋熱帯域から東インド洋熱帯域へと多くの熱を輸送するため、全球の気候変動を考える上で重要です。例えば、太平洋熱帯域でエルニーニョが発生する前には、必ず西太平洋熱帯域に暖水が蓄積されることがよく知られています。インドネシア通過流は、この西太平洋熱帯域から熱を奪うため、インドネシア通過流による熱輸送量の変化は、エルニーニョの発生にも影響を与える可能性が考えられます。また、インドネシア通過流が流れ込む東インド洋熱帯域は、ダイポールモード現象の発現海域としても知られています。インドネシア通過流によってより多くの暖水がこの海域に輸送されると、東インド洋での湧昇が抑えられ、正のダイポールモード現象の発生を抑制することも考えられます。

 そのインドネシア通過流の主要な経路であるマッカーサー海峡での南北流は、亜表層に極大を持つことが、最近の係留計観測によって明らかにされました。このような流速プロファイルは、熱輸送を考える上で、非常に重要です(表層に暖かい水が存在するため、同じ流量でも、表層に流速の極大がある場合に比べて、亜表層に流速の極大がある場合は、熱輸送量がかなり小さくなるからです)。



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