2011 年度 第 10 回 気象学セミナー

場所 理学部 1 号館 8 階 851 号室
日時 10 月 27 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 杉本 憲彦 (慶応義塾大学)
講演題目 大気重力波の自発的な放射過程の研究
概要
 大気重力波は運動量を遠方まで輸送し、中層大気の大循環を駆動する重要な働きを担う。中層大気の大循環はオゾンや二酸化炭素などの物質輸送を通じて、気候変動に大きな影響を与える。このため、重力波の励起、伝播、散逸の諸過程の理解は、より信頼性の高い気候変動予測のために、重要な研究課題の一つとなっている。近年、観測による研究では、ジェット気流や台風等の強い渦的な流れからの重力波放射が報告されているが、その放射過程についての理解は不十分である。  この重力波の放射過程は、初期に非平衡状態を仮定する地衡流調節過程と異なり、渦的流れの時間変動により、自発的に平衡状態が破れ、重力波が放射される(自発的放射)。これまで、我々は簡略化モデルを用いた数値的および理論的研究によって、この放射過程の解明を目指してきた。本発表では、f平面や球面浅水系のこれまでの研究成果を簡単に紹介したのち、連続成層した系での世界の研究動向をレビューする。また最近の研究成果として、f平面浅水系において、同軸回転する渦糸対からの自発的な重力波放射について、遠方場の解析解の導出と、同じ枠組みでの数値実験の結果についても報告したい。