2010 年度 第 8 回 気象学セミナー

場所 理学部 1 号館 8 階 851 号室
日時 6 月 17 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 木下 武也
講演題目 成層圏の物質の南北輸送における擾乱の役割について
概要
 大気中の物質の輸送は、オイラー平均流ではなくラグランジュ平均流によって表される。東西平均したラグランジュ平均流に相当するものとして、変形オイラー平均 (Transformed Eulerian-mean (TEM)) 方程式系における残差子午面循環が Andrews and McIntyre [1976, 1978] によって定義された。TEM 系を用いた子午面断面における大気循環の解析は広く行われてきたが、この手法では東西平均を用いるため東西方向の輸送や子午面循環の経度依存性を表現することが出来ない。そのため、 TEM 系を 3 次元に拡張する研究が行われてきた。最近、Miyahara [2006], Kinoshita et al. [2010], Noda [2010] では、時間平均を用いて、大気重力波にも適用可能な 3 次元残差循環と波活動度フラックスを導出した。この 3 次元残差循環は、理論上 TEM 系の残差子午面循環の自然な 3 次元への拡張といえるが、東西平均場では含まれない傾度風 (または地衡風) が加わっているため、擾乱活動に伴う 3 次元残差循環を解析するには、傾度風を取り除く必要があった。以上をふまえ本研究では、傾度風を取り除いた 3 次元残差循環を計算し、これを用いて南半球成層圏の物質輸送における大気擾乱の役割を調べた。発表前半では、8〜10 月における南半球成層圏の南北輸送の描像を紹介する。後半では、この南北輸送を作り出す擾乱の特徴および性質について解析した結果を報告する。