2010 年度 第 6 回 気象学セミナー

場所 理学部 1 号館 8 階 851 号室
日時 6 月 3 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 杉本 憲彦 (慶應義塾大学)
講演題目 ジェットの非定常運動に伴う、大気重力波の放射過程の研究
概要
大気重力波は運動量を遠方まで輸送し、中層大気の大循環を駆動する重要な働きを担う。中層大気の大循環はオゾンや二酸化炭素などの物質輸送を通じて、気候変動に大きな影響を与える。このため、重力波の励起、伝播、散逸の過程は、将来気候の変動予測において、重要な研究課題の一つである。近年、観測による研究では、ジェット気流や台風等の強い渦的な流れからの重力波放射が報告されているが、その放射過程についての理解は不十分である。 そこで本研究では、簡略化モデルを用いた数値的および理論的な研究によって、この重力波放射過程の解明を目標とした。まず、渦的流れと重力波を含む最も簡単な系であるf平面浅水系を用いて、放射される重力波の定量的評価とその放射機構を調べた。また球面に系を拡張し、地球回転が緯度変化する効果も調べた。渦的流れから放射される重力波はエネルギーが小さいため、高精度高解像度な数値計算法が必要である。本研究では、高精度の数値解法として結合コンパクト差分法や、無限境界のスペクトル法を用いた非線形実験を行った。また、流体力学分野における渦からの音波放射理論 (渦音理論) を援用し、重力波の放射理論の構築も行っている。発表では、これまでの研究成果を報告するとともに、今後の展望についても議論したい。