2009 年度 第19回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 西棟 7階 710号室
日時 1 月 21 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 高麗 正史
講演題目 CALIPSO衛星搭載ライダー観測データを用いた極成層圏雲の解析
概要

 極成層圏雲(PSC)は低温な下部成層圏に出現する雲である。PSCは雲粒表面で の不均一反応と、硝酸の取り込みによる脱窒素過程によって、オゾンホール形成 に重要な役割を果たすことが知られている (Solomon, 1999)。その組成は、 NAT、STS、ICEであることが既存研究から明らかになっている (Poole and McCormick, 1998; Browell et al. 1990; Toon et al. 1990) 。一方、ロスビー 波や総観規模擾乱、重力波等の大気波動は、極域下部成層圏の気温変動をもたら し、PSCの形成に影響を与えることが指摘されている (Teitelbaum et al. 2001, Wang et al. 2008, Carslaw et al. 1998) 。しかし、冬季の極域成層圏に存在 する様々なスケールの擾乱とPSCとの関係を包括的かつ定量的に解析した研究は 少ない。

 本研究では、まず南半球に注目した。CALIPSO衛星のライダー観測データを用 いてPSCの特性を解析し、様々なスケールの擾乱との関連を調べた。比較的空間 スケールの大きな擾乱の解析にはECMWFの再解析データを用い、重力波の解析に はCOSMIC衛星によるGPS掩蔽観測温度データを用いた。  PSCの変動は、再解析データに見られる大規模な温度変動 (Rossby波や対流圏 から延びる擾乱) と概ね対応していた。また、重力波によるポテンシャルエネル ギーが高い南極半島付近では、他の領域と比べて、総観規模以上の温度場より予 測される量より多くのPSCが出現していることが分かった。