2009 年度 第11回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 西棟 3階 336号室
日時 10 月 15 日 (木) 16:30〜18:00
講演者1 笹平 康太郎
講演題目 北半球冬季ブロッキング高気圧の3次元構造 と時間発展の地域特性
概要

ブロッキング現象とは、ある季節の上空の西風が本来強いはずの場所で、循環の 持続的な南北蛇行に伴い、西風が非常に弱まり、それに駆動される移動性擾乱の 経路が阻害されてしまう現象である。ブロッキングは冷夏や猛暑などの異常気象 をもたらす重要な現象である。

本研究の目的は、ブロッキング高気圧の3次元構造、時間発展の地域的特性につ いて統一的な解釈を掲示することである。そこで、NCEPの再解析データを用いて 北半球冬季、中高緯度各地で観測された顕著な高気圧偏差について250hPaの高度 場偏差を基準として合成図解析を行った。今回の発表では、250hPa面の高気圧偏 差の増幅に対する移動性擾乱からのフィードバック強制の定量的な見積りと高気 圧偏差の減衰期において射出されるロスビー波が成層圏の循環にどのような影響 を与えるか、について報告する。

講演者2 土屋 主税
講演題目 NICAM 実験データを用いた熱帯対流の非断 熱加熱の重力波励起メカニズムの解析
概要

北半球夏期は、インドモンスーン地域の対流圏中上層が東風域となる。この時期 に中層大気に伝播する重力波は、インドモンスーン地域の対流からの発生が、山 岳起源、ジェット起源と並んで顕著である (Sato et al. 2009) 。しかし、対流 起源の重力波は、励起メカニズム、発生する重力波のクライマトロジーの解明が 進んでいない。

そこで本研究で、非断熱加熱による重力波励起のメカニズムの解明を目的とする。 全球非静力雲システム解像モデルである NICAM (Satoh et al. 2008; Tomita and Satoh, 2004) を用いた長期積分実験である2004年北半球夏実験 (Oouchi et al. 2009) データを用いた。雲微物理過程 (Grabowski, 1998) より陽に表現さ れた非断熱加熱の構造に着目した。

北半球夏実験ではインドモンスーン地域の対流圏中上層東風が再現されていて、 重力波が上方伝播する条件を満たしていた。非断熱加熱は高度 6 km・北緯10度 付近に極大値を持っていた。下部成層圏の重力波の運動量フラックスは、ジェッ ト付近、山岳地域、インドモンスーン地域で特に顕著であった。