2009 年度 第 6 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 西棟 7階 710号室
日時 07 月 2 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 木下 武也
講演題目 成層圏における物質の南北輸送の経度依存 性に関する研究
概要

 大気中の物質の輸送は、オイラー平均流ではなくラグランジュ平均流によって 表わされる。ラグランジュ平均流は、近似的にオイラー平均流とストークスドリ フトの和と一致する。東西平均したラグランジュ平均流を表現するものとして、 変形オイラー平均 (Transformed Eulerian-mean (TEM)) 方程式系における残差 子午面循環がAndrews and McIntyre [1976, 1978] によって定義された。TEM系 を用いた子午面循環における大気循環の解析は広く行われてきたが、この手法で は東西平均を用いるため東西方向の輸送や子午面循環の経度依存性を表現するこ とが出来ない。そのため、TEM系を3次元に拡張する研究が行われてきた。

 Kinoshita et al [2009] は、大気重力波にも適用可能な3次元残差循環と波活 動度フラックスを導出した。この3次元残差循環は、TEM系の残差子午面の自然な 3次元への拡張そいえるが、時間平均を用いるため準停滞性擾乱がもたらす循環 を表現することが出来ない。そこで本研究は、子午面循環の経度依存性における 大気擾乱の役割を調べるため、残差子午面循環および3次元残差循環両者を用い た解析を行う。発表前半では、1997〜2006年における成層圏の子午面循環の描像 および3次元残差循環の紹介を行う。後半では、準停滞性擾乱、非定常擾乱それ ぞれがもたらす子午面循環の経度依存性について解析した結果を報告する。