2008 年度 第 8 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 西棟 7階 710号室
日時 11 月 27 日 (木) 10:30〜12:00
講演者 舘野 聡
講演題目
高解像度気候モデルを用いた、南半球高緯度の重力波の力学特性と発生源の研究
概要

大気重力波は運動量を鉛直に輸送し、中層大気大循環の形成に重要な役割を担っ ている。この作用を定量的に捉えるためには、重力波活動のクライマトロジーの 把握、発生源の系統的解明が必要である。Yoshiki and Sato (2000)、 Pfenninger et al. (1999)は、ラジオゾンデ観測データの解析から、重力波エネ ルギーが南極域下部成層圏では春に極大となることを示した。また最近、様々な 衛星観測(例えば、Jiang et al. (2002)、Alexander et al. (2008))によっ て、冬季成層圏でアンデス山脈と南極半島上空で重力波活動が非常に強いことが 指摘され、注目を集めている。

本研究では、高解像度気候モデル(KANTOプロジェクト)を用いて、南半球高緯 度に存在する重力波活動を調べた。その結果、アンデス山脈および南極半島を始 点として重力波エネルギーの極大が、極夜ジェットに沿って存在することがわ かった。この極大は上空ほど下流に伸び、上部成層圏では緯度円半周以上にわ たっていた。

次に、アンデス、南極半島起源の山岳波の伝播経路を調べるため、理想的な条件 の下でレイトレーシング解析を行った。その結果、これらの山岳波は、波数ベク トルが極夜ジェットを向いていること、波数ベクトルと垂直な方向の背景風によ る移流、背景風の南北勾配による波数の時間変化の効果により、極夜ジェットに 集中し、経度約60,A0東へ伝播しうることがわかった。