2008 年度 第 2 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 西棟 7階 710号室
日時 6 月 19 日 (木) 10:30〜12:00
講演者 西井 和晃
講演題目
CMIP3気候モデル中での極域成層圏再現性と対流間循環再現性
概要

冬季において、成層圏極渦変動が対流圏中高緯度循環に変動をもたらすことは よく知られている(Kodera et al. 1990, Baldwin and Dunkerton 1999など)。 また、温室効果気体の増加やオゾンの減少による成層圏の寒冷化トレンドに 伴い、南北両半球の対流圏環状モードの正のトレンドが引き起こされていると する研究がある(Shindell 1999, Thompson and Solomon 2002)。 以上のことは、大循環モデル中での成層圏の再現性が、対流圏の再現性に影響を 与える可能性を示唆している。そこで本研究ではCMIP3モデル間の北半球 成層圏極渦の再現性に関連した対流圏循環の系統的なバイアスについて調べた。

30hPaの東西平均東西風を成層圏極渦の指標とすると、冬季において、 成層圏極渦の強いモデルは弱いモデルに比べて極域の海面気圧が低い傾向に あった。この傾向は3月の成層圏極渦と4月の海面気圧について最も顕著で あった。また東西平均東西風は成層圏から対流圏にかけて強い傾向にあった。 中高緯度においては、成層圏極渦の強いモデルと弱いモデルの循環場の差の パターンは環状モードに似ていた。また、極渦が強いモデルほど 地表面気温、海面水温は、南北亜熱帯で上昇する傾向にあった。 降水量は極域で増加、中緯度で減少する傾向にあり、 太平洋の北半球亜熱帯では増加する傾向にあった。 これら対流圏と成層圏循環バイアスの因果関係はこれからの課題である。