気象学臨時セミナー

場所 理学部 1号館 西棟 7階 710号室
日時 5 月 8 日 (木) 10:30〜12:00
講演者 山下 陽介 ( 東大CCSR )
講演題目
太陽活動、QBO が北半球の気候に与える影響
概要

 北半球冬季に卓越する変動として北極振動(Arctic Oscillation; AO) または北半球環状モード(Northern Hemisphere annular mode; NAM)が 知られている。AO/NAM の位相は、赤道成層圏で卓越する準 2 年周期振動 (quasi-biennial oscillation; QBO)や太陽活動による影響を受ける。 QBO が西(東)風の場合にAO/NAM が正(負)となり極渦が強く(弱く)なる 関係は Holton-Tan Oscillationと呼ばれている。Holton-Tan Oscillation は太陽活動の影響を受け late winter の太陽活動極小期に 相関が大きい。本研究では、Holton-Tan Oscillation とその極域での 鉛直方向へのつながりに関してモデルと観測結果を用いた解析を行った。

Holton-Tan Oscillation を再現するため、大気大循環モデル (atmosphericgeneral circulation model; AGCM)に QBO を作るような forcing を導入した。AGCM の出力で QBO の西風フェーズと東風フェーズの 差を取った結果、東西風は北極付近の成層圏で正の値を示し、Holton-Tan Oscillation が確認された。E-P flux 解析を行うと、西風フェーズ (東風フェーズ)では低緯度の 50-100hPa付近で赤道向きの flux が強く (弱く)なる傾向が見られ、中高緯度では西風フェーズ(東風フェーズ)で flux の上方伝播の弱化(強化)が見られた。このため、QBOの変化に伴う 力学の変化が Holton-Tan Oscillation に重要な役割を果たすことが 示唆された。

太陽活動に伴う Holton-Tan Oscillation の変化とその極域での 鉛直方向へのつながりに関して、NCEP/NCAR 再解析データを用いて調べた。 その結果、Holton-Tan Oscillation と相関の高いパターンは、太陽活動 極小期の late winterに成層圏から対流圏までつながった構造を示した。 太陽活動に伴う変化を調べるため、AGCM にオゾンとの化学相互作用を 含めた化学気候モデル(Chemistry Climate Model; CCM)を用いた。 CCM の出力を解析した結果、太陽活動極小期の late winter に Holton-Tan Oscillation が極域で成層圏から対流圏へ伸長し観測結果と 整合的であった。