2007 年度 第 11 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 8階 843号室
日時 1 月 17 日 (木) 11:00〜12:30
講演者 小山 健宏
講演題目
非静水圧モデルを用いたカタバ風の研究
概要

 南極大陸の地表付近では、放射冷却により重くなった空気が斜面を滑り落ちるように吹くカタバ風が卓越している。James et al.(1989)は、軸対称な理想地形を用いた数値計算を行い、カタバ風の風速があるピークに達した後、次第に弱まり、カタバ風が維持されないことを示した。これは、カタバ風の形成とともに南極大陸上空で西風(低気圧渦)が強まり、斜面下降流を弱めるように働く南極中心に向いた気圧傾度力が生じるからである。すなわち、カタバ風維持のためにはこの西風を弱めるメカニズムが必要となる。

 また、最近では特に南極大陸沿岸の急斜面でのカタバ風のふるまいが注目されている。たとえば、急斜面において、重力波の発生や、カタバ風ジャンプが頻繁に観測されているからである。これらの現象の高分解能モデルでの再現が試みられているが、複雑地形、あるいは接地層内での風速、安定度の再現性に問題が残るのが現状である。

 本研究では、以上をふまえ、気象研究所/数値予報課統一非静力学モデルを用いて、カタバ風の力学を詳しく調べるのが目的である。今回の発表では、カタバ風に関する先行研究を紹介するとともに、気象研究所/数値予報課統一非静力学モデルの特徴とモデルテストの結果(孤立峰における3次元山岳波とメソスケールのカルマン渦)を示す。