気象学臨時セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 8階 839号室
日時 11 月 28 日 (水) 17:00〜18:30
講演者 杉本 憲彦さん (名古屋大学大学院工学研究科「計算科学フロンティア」COE研究員)
講演題目
ジェットから放射される大気重力波の簡略化モデルを用いた研究
概要

 大気重力波は中層大気の大循環を駆動し、オゾンや二酸化炭素等の物質循環を 通じて、地球の気候変動に重要な影響を与える。近年の観測的研究では、 強い渦的流れ(ジェットや台風等)からの重力波放射が報告されるが、 その励起メカニズムは未だ解明されていない。この重力波放射過程は、 ほぼバランスした渦的な流れの非定常運動に伴い、自発的に放射されるため、 「自発的な重力波放射過程」と呼ばれる。この過程は初期に非平衡状態を 仮定し、そこからの重力波放射を議論する、「地衡流調節過程」とは 本質的に異なるものである。

 本講演では、渦と重力波を含むもっとも簡単な系である、f平面浅水系を 用いて、これまで行ってきた「自発的な重力波放射過程」に関する数値的研究 の結果を紹介する。この系の特徴は、地球回転の効果を除くと2次元の圧縮性 流体の方程式系と等価であるため、流体分野における渦からの音波放射 理論(Lighthill, 1952)を援用できる点にある。これにより重力波ソースの 導出を行い、その解析によって数値実験の結果を解釈した。最後に、 最近推進中の球面浅水系の結果も紹介し、f平面浅水系の結果と対比した 議論を行う予定である。