2007 年度 第 7 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 8階 843号室
日時 10 月 4 日 (木) 10:30〜12:00
講演者 松井 仁志
講演題目
領域3次元モデルを用いた東アジアの都市域におけるエアロゾルの変動過程と光学的特性
概要

東アジアでは近年の急速な経済発展に伴って、窒素酸化物(NOx)や二酸化硫黄(SO2)などの人為起源物質の排出量が著しく増大している。これらの汚染物質はエアロゾルの生成を通して、東アジアやその下流領域において少なからぬ直接的および間接的な気候影響(放射場の変化、大気加熱量の変化、水循環の変化など)や健康被害などを引き起こす可能性があることが指摘されている。またこれらの人為起源物質の発生源として、大都市(メガシティ)の役割も注目されている。

本研究では、東アジアの大都市の1つである北京に注目し、領域3次元モデルを用いて北京周辺のエアロゾルとその前駆気体の濃度場の計算を行った。比較・検証には2006年に北京(北京大学構内)とその周辺域(北京から南に50 kmのYufaなど)で北京大学や東大先端研が行った大規模な集中観測の結果を用いた。

2006年8〜9月のおよそ1ヶ月の観測期間中に5回のエアロゾル高濃度イベントが北京とYufaで観測された。モデル計算によりこのようなエアロゾルの変動の要因となる気象場を概ね再現させ、エアロゾルの濃度変動の傾向をある程度再現させることができた。エアロゾルが高濃度となった期間には、地上の放射観測(AERONET)や人工衛星観測(MODIS)から得られた光学的な厚み(AOD)も増大していた。そこでモデル計算により得られたエアロゾル量をもとに簡易的にAODを計算したところ、その変動をある程度再現することができた。発表ではこのようなモデル計算による観測の再現性の他に、北京周辺での化学成分の水平分布特徴、光学的厚みの場所による違いや成分比率について考察した初期的な結果を示す。