2007 年度 第 6 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 8階 843号室
日時 7 月 12 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 石坂 賢嗣
講演題目
(論文紹介) Branstator, G., Circumglobal teleconnections, the Jet Stream Wavequide, and the North Atlantic Oscillation , J. Climate., 15, 1893-1910 , 2002
概要

 理論的に予測されるジェットの導波管としての働きが長周期擾乱の振る舞いに影 響を与えるのかどうかを、月、季節平均の上部対流圏北半球冬季の場について調 べた。実際に、ジェット周辺の擾乱は、特に東西風の南北勾配が強い南アジアの ジェットについて、ジェット内での変動はより小さなスケールの、東西方向に連 なる波列パターンからなる傾向にある。一方、東西風の南北勾配の弱い太平洋中 央部の変動は、南北方向に連なるアーチ型のパターンからなる。ジェットの導波 管構造に伴うパターンは、南北にトラップされ、東西に連なるために、他の領域 と比べてより遠方にテレコネクションする可能性が示唆される。

 南アジアジェットの導波管内での変動は東西波数5からなり、特定の位相が卓越 しない。しかし、この変動パターンのある1つの位相は、中緯度のより遠く離れ た地点間の共変動をもたらす特別な位相であることが示された。これによって緯 度円を一周するような変動のパターンが作り出されると考えられる。また、この 特別な位相をもったパターンは顕著な東西平均成分を持つ。さらに、上部対流圏 において、このパターンは流線関数のEOF1にもみられ、南北風のEOF1と本質的に ほとんど同じである。北大西洋上においては、このパターンはNAOとよく似た構 造をもち、NAOに伴う上部対流圏の半球的な循環偏差に対して大きな寄与をしうる。