2007 年度 第 5 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 8階 843号室
日時 6 月 28 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 西井 和晃
講演題目
アンサンブル予報を用いた成層圏突然昇温度の解析
概要

 2006年1月において観測された成層圏突然昇温は、対流圏から 成層圏への間欠的な大規模波動伝搬によって引き起こされた。 特に、1月中旬における上向き波動伝搬の強化は、大西洋上に 発達した対流圏高気圧性偏差を波源とする波束的な波動による ものであった。この研究では、1月11、12日初期値の気象 庁1ヶ月アンサンブル予報のプロダクトをもとに、大西洋高気 圧性偏差の発達と成層圏突然昇温の予測について解析を行なっ た。アンサンブル予報のスプレッドの極大域は、初期値時刻に 発達中であった太平洋上の地上低気圧のまわりを起源として、 大西洋まで東進していた。これは、観測された移動性擾乱の下 流発達の予測誤差によるものと考えられる。また、大西洋高気 圧偏差の発達が観測された1月16日前後には、大西洋上でス プレッドの極大が見られた。また、大西洋上での成層圏への波 束伝搬に伴って、スプレッドの極大は成層圏にも広がっていた。 以上のことから、太平洋上で発達した地上低気圧まわりの初期 値誤差が成層圏突然昇温の予報に影響を与えた可能性を示した。 この結果は、大西洋の高気圧性偏差および極渦内を対象とする 簡易感度解析によっても支持された。