2007 年度 第 4 回 気象学セミナー

場所 理学部 1号館 中央棟 8階 843号室
日時 6 月 14 日 (木) 16:30〜18:00
講演者 小坂 洋介
講演題目
複数の再解析データに見られるPJパターンの力学の比較研究
概要

夏季の熱帯北西太平洋(フィリピン付近)における積雲対流活動と東アジアの循環場に 相関があることが知られており、この偏差パターンはPJパターンと呼ばれ、夏季の 日本の天候に影響する主要なテレコネクションパターンの一つである。従来、PJパタ ーンは積雲対流活動偏差に伴う非断熱加熱偏差によって励起されたロスビー波列もし くは対流圏上層の順圧不安定波の一部と考えられてきたが、Kosaka and Nakamura (2006)はNCEP-DOE再解析データを用いて、PJパターンが順圧および傾圧エネルギ ー変換を通して平均場のエネルギーを得るような力学モードである可能性を示した。

再解析データにおける非断熱加熱は、その再解析において用いられるモデルのパラメ タリゼーションに依存し、風速や温度などの変数に比べてデータセットによる違いが 大きいと考えられる。本研究では4つの再解析データを用いて、非断熱加熱偏差の評 価を含むPJパターンの力学の比較を行った。

PJパターンに伴う渦度偏差は4つの再解析データで同様の構造を示し、エネルギー収 支解析においても順圧および傾圧エネルギー変換はそれぞれ4つのデータで同程度の 効率を示した。対照的に、対流活動偏差に伴う非断熱加熱偏差の構造と振幅にはデー タ間でかなりの違いが見られ、熱帯域での温度偏差もやや異なる分布を示した。これ らの差異は、非断熱加熱偏差に伴う有効位置エネルギー生成に大きな違いをもた らし、 特にJRA-25再解析データを用いた結果から、その寄与はエネルギー変換からの寄与と 同程度になりうることが示唆された。