2003 年度第 12 回 気象学セミナー

場所 理学部 3 号館 320 号室 (←ご注意下さい)
日時 11 月 18 日 (火) 16:30 -- 18:00
講演者 三瓶 岳昭
講演題目
ストームトラック活動と西風ジェットの関係、およびそこに地表傾圧性 の果たす役割について
概要

移動性高低気圧に代表される総観規模擾乱の活動は、中緯度の海洋上で 活発であり、ストームトラックを形成している。その活動は、上空のジェ ットの下では強い南北温度勾配(西風鉛直シア)にともない、擾乱の傾圧 的な成長が大きいためと解釈できる。しかし、真冬の北太平洋では擾乱の 活動が上層の西風風速と逆相関をもつことが知られている(Nakamura 1992)。

この現象の要因の一つとして、以前の発表では、西風の強い冬には太平 洋上で擾乱が亜熱帯ジェットコア付近を伝播する傾向があり、40N 付近の 地表傾圧帯との相互作用が弱まることを示した。この結果から、擾乱の発 達に対する地表傾圧性の重要性とともに、そこから離れた亜熱帯ジェット 下が、必ずしも擾乱の成長に最適とはいえないことが示唆される。

今回の発表では、南半球を含めた、ストームトラックと地表傾圧性の関 係についての解析結果を示す。冬のインド洋〜太平洋では 30S付近に強い 亜熱帯ジェットが見られるが、インド洋のストームトラックは 50S付近に ある。太平洋に至って多くの擾乱が亜熱帯ジェット沿いを伝播するように なるが、擾乱の傾圧的発達の指標となる極向き熱輸送はその緯度では小さ く、ピークは 65S付近にある。これらの結果も、擾乱の発達に関して海洋 フロントに伴う地表温度勾配の重要性を支持している。

この重要性を検証するため、AGCMを用いた水惑星条件の実験で、中緯度 にシャープな勾配をもつ現実的な SST分布と、緩やかな SST分布を与えた 場合の比較を最近行っている。まだ解析途中だが、前者は冬半球でも、擾 乱振幅の極大が亜熱帯ジェット沿いと中緯度の二つに分かれており、擾乱 にともなう西風運動量輸送のため、中緯度で下層の西風が最大となった。 地表風が海洋循環を駆動する一方、海洋のフロントが地表傾圧性を通して 擾乱活動に影響することを鑑みると、興味深い結果である。